2025.08.04

四季折々の和菓子の種類!世界に知ってもらいたい日本伝統の食文化

四季を敏感に感じ取り、その時どきの風情を大切にする日本の文化は、和菓子においても例外ではありません。今回は、春夏秋冬それぞれの素材を使ってつくられ、味覚、視覚、嗅覚で季節感を楽しめる四季折々の代表的な和菓子をご紹介します。また、世界の人々は日々どんなお菓子を味わっているのでしょうか。日本でも知られるようになってきた海外の季節のお菓子もご紹介します。

花見団子や桜餅に草餅…色と香りで春を告げる和菓子

柏餅

春の和菓子は、素材の色と香りで私たちに春の訪れを感じさせます。代表的なお菓子として、塩漬けにした桜葉でくるんだ桜餅、香り高いよもぎを練りこんだ草餅、ピンク・白・緑の色づかいが春らしい花見団子などが挙げられ、練り切りには桜や菜の花、ウグイスなどのモチーフが多用されます。一方、端午の節句に欠かせない柏餅やちまきには目にも鮮やかな緑の葉が使われ、季節の移ろいが感じられます。

和菓子は季節を先取りすることも多く、春の和菓子はまだ肌寒い時期から店頭に並びます。桜色の和菓子が目に入ると春の訪れが近いことを感じ、なんとなく気持ちが浮き立つものです。また、春の和菓子に使われる桜の花や葉の塩漬け、よもぎは雑菌の繁殖を抑えるといわれ、ほんのりと漂う香りは安らぎを与えてくれます。これらの素材を使うのは春を感じさせる演出であると同時に、気温が上昇する時期に安全に食べるための知恵ともいえるでしょう。※1

海外に目を向けると、春のお菓子にはその時期の宗教的な行事に関連したお菓子も多いようです。
春にはキリストの復活を祝うイースターがあり、卵をモチーフにしたお菓子が見られます。ヨーロッパでは、フランスの「アニョー・パスカル」、イギリスやアイルランドの「シムネルケーキ」などがあります。「アニョー・パスカル」はフランスのアルザス地方で食べられる羊の形をした伝統菓子です。「シムネルケーキ」はキリストの弟子の数にちなんだ11個のマジパンボールが乗ったという定番のフルーツケーキです。※2

☆季節の和菓子についてはこちらもご覧ください。
緑茶、玉露、煎茶って何が違うの?季節の和菓子との組み合わせを考える

あんみつ、葛餅、水ようかん…涼を呼ぶ夏の和菓子

あんみつ

高温多湿の日本の夏は食欲もおとろえがちです。そんな季節には、見た目が涼しげでのどごしもよい和菓子が好まれます。代表的な夏のお菓子としては、葛餅、わらび餅、葛切り、水まんじゅう、水ようかん、あんみつなどが挙げられます。三角形のういろうで氷を表現した「水無月」や、アユをかたどった「若鮎」も夏ならではの和菓子で、練り切りのモチーフには涼やかな朝顔や金魚などが登場します。

夏の和菓子には寒天や葛が多用され、餡の甘さが控えめで水分量が多めのものが目立ちます。お饅頭などの一般的な生菓子に含まれる水分は30%以上とされていますが、ところてんは約99%、水ようかんや葛饅頭は50%程度が水分です。※3
これは食が細りがちな季節に食べやすくする工夫のひとつです。ただし、水分量が多いお菓子は日持ちしにくいため保存には気をつけましょう。

海外では、旬のベリーをたっぷり入れたイギリスの「サマープティング」や、フィリピンのかき氷「ハロハロ」、台湾のかき氷「雪花冰(シュエファービン)」などひんやりしたデザートが多くみられるのが夏です。器までしっかり冷やして食べると、おいしさがより引き立ちます。

☆「和菓子の日」の歴史もあわせてご覧ください。
和菓子の日とは?和菓子の日の歴史と厄除けと招福の関係

栗、さつま芋、柿、かぼちゃ…素材を楽しむ実りの秋の和菓子

栗

秋は栗、さつま芋、柿、かぼちゃなど和菓子向きの食材が豊富な季節で、その持ち味を存分に生かしたお菓子が多くみられます。柿は干し柿や羊羹、最中など、かぼちゃは大福やお饅頭などさまざまな和菓子にアレンジされています。栗ようかん、芋ようかん、栗きんとん、月見団子などのほか、ほのかに柚子が香る和菓子もたくさん登場し、練り切りの形のモチーフには栗や柿、紅葉などが使われて秋を感じることができます。

お餅を餡で包んだおはぎも秋の和菓子ですが、同じものが春にはぼた餅と呼ばれます。名前の違いはそれぞれ、秋のお彼岸の時期に咲く萩(はぎ)の花、春のお彼岸の頃に咲く牡丹(ぼたん)の花に由来しています。同じお菓子であるにもかかわらず季節の花にちなんだ別の名前が付けられているのも、四季の風景を大切にする日本らしさの表れといえるでしょう。

また、旬の素材には甘みや栄養価が高いというメリットがあります。たとえば、かぼちゃは夏に収穫し、追熟しておいしくなった秋が旬とされており、数か月の追熟によって糖度もβ-カロテンの量も大幅にアップするといいます。和菓子を通じて食材の多様な恵みを享受できるのは、とても贅沢な食の楽しみではないでしょうか。※4

海外でも、実りの秋にはかぼちゃを使った「パンプキンパイ」、栗を使った「モンブラン」、キャラメリゼしたりんごをたっぷり入れた「タルトタタン」など、季節を感じられるお菓子が数多くあります。

☆こちらの記事でも世界のお菓子をご紹介しています。
ドルチェって何?スイーツやデザートとの違い。本場の味を再現したお菓子も!

いちご大福、雪餅…
クリスマスや雪景色とともに楽しむ冬の和菓子

いちご大福

冬は雪景色に見立てた和菓子や華やかな祝い菓子などが多くなります。雪のように白くふんわりしたお餅が多用され、雪餅、椿餅、いちご大福、おしるこなどが代表的です。お正月前後には干支をデザインした和菓子が増え、石川県金沢市では梅をかたどった「福梅」という紅白の最中(もなか)がお正月の和菓子として定着しています。また新年最初に開かれるお茶会「初釜」には、甘く煮たゴボウとみそ餡をお餅で包んだ花びら餅が定番です。行事が多い年始にお祝いの意味を込めた和菓子が増えるのも、この時期ならではといえます。

一方、海外の冬のお菓子といえば、なんといってもクリスマス関連のお菓子でしょう。ドライフルーツが詰まったドイツの「シュトレン」、フランスの「ガレットデロワ」などは、日本でも知られるようになりました。ちなみにガレットデロワは、切り分けたときに小さな陶器の飾りや粒アーモンドが入った「当たり」のピースを手にした人が、その日の王様として祝福されるというお菓子です。

 

お菓子に季節の風情を表現するのは日本の食文化ならではといえるかもしれません。和菓子に限らず、スーパーやコンビニで手軽に買えるおせんべいやクッキーなどのお菓子にも、季節を感じられるものがたくさんあります。買い物に出かけた際に、四季を楽しめるお菓子を探してみてはいかがでしょうか。

☆季節を味わう市販のお菓子でも季節の味覚を楽しめます。

・気分は夏祭り!
ぱりんこ 焼きもろこし味」 ※2025年8月末まで
ぱりんこ たこやき風味」 ※2025年9月末まで

・秋の味覚を先取り!
特濃雪の宿 おさつバター」「特濃雪の宿ミルクかりんとう 栗ぜんざい風味」 ※2025年9月末まで

【参考文献】
※1 公益財団法人 岡山県健康づくり財団
https://www.okakenko.jp/column/food/%e3%81%95%e3%81%8f%e3%82%89%e3%81%ae%e9%a6%99%e3%82%8a%ef%bc%88%e2%99%a1%ef%bc%89/
※2 辻調理師専門学校
https://www.tsuji.ac.jp/oishii/recipe/k15012_outlline.html?CID=TJONCS0001&RECIPE_CD=k15012&SEARCH_TYPE=DIR&GENRE=51
※3 食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※4 タキイ種苗株式会社
https://shop.takii.co.jp/qa/detail/498

  • 澤 晶子

  • ライタープロフィール
    澤 晶子(サワ アキコ)
    WEB編集者・ライター
    長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。