今や、節分を代表する行事食として全国に広まっている恵方巻きをはじめとして、各地に受け継がれる節分の縁起物には、新しい年の始まりを大切にする日本ならではの文化が息づいています。本記事では、恵方巻きの成り立ちや今年の恵方の持つ意味、さらに各地で親しまれている主な食べ物を紹介し、行事をより深く楽しむためのヒントをお届けします。
恵方巻の由来と歴史 開運を招く食べ方のルールと心得

季節や節目などで行うさまざまな行事やお祭り、お祝いのときには例えば、節分の柏餅や十五夜のお月見団子など特別な料理を食べることがあります。しかし、「切っていない太巻き(海苔巻)にかぶりついて1本丸ごとを無言で食べきる」という節分の風習は、行事食の中でかなりユニークといえるでしょう。この習わしはどこから来たのでしょうか。
節分のときに恵方巻きを丸かぶりするのは、諸説あるものの、江戸時代に大阪の商人たちが商売繁盛を祈願して太巻きを食べる習慣があり、それが由来となったという説が有力です。
また1930年ごろからは海苔や寿司関連の商業組合が、節分に太巻きの丸かぶりを促進するキャンペーンを実施し、80年代に大手コンビニエンスストアがそれを「恵方巻」として販売したことで、全国的な風習となりました。※1
恵方巻きのなかでも、七福神にあやかってきゅうり(商売繁盛)、伊達巻(金運)、うなぎ(出世)、かんぴょう・えび(長寿)、しいたけ(神様へのお供え物)、桜でんぶなど縁起のよい7つの具を巻いた恵方巻きは、とりわけ吉とされています。また、これらの具材をくるくると巻いて作ることから「福を巻き込む」という意味や、太い巻き寿司を鬼の金棒に見立て、それを食べて厄を払おうという願いも込められているのだとか。さらに恵方巻きを切らずに、よそ見をせず無言で食べるというルールには、「福が逃げないように」「縁を切らないように」という祈りが込められているようです。
しかし、太い恵方巻きを1人で1本食べきるのは大変ですよね。そこで最近では、食べやすいよう、細巻や中巻にしたもの、長さの短いハーフサイズのもの、恵方巻きに見立てたロールケーキなども見かけるようになりました。
☆そのほか、季節ごとの行事や料理の意味について、詳しくはこちらをご覧ください。
・端午の節句の食べ物と飾りの由来。柏餅やちまきに込められた子どもたちへの思い
・中秋節とは?十三夜や十六夜とは?知っておきたい秋のトリビア
そもそも「恵方」って?
食と参拝の両面から福を呼び込む恵方の意味

節分に食べる恵方巻きは、「恵方を向いて食べる」というルールからその名がつけられています。「恵方」とは、「明の方(あきのかた)」とも呼ばれる吉方のことで、その年の福徳をつかさどる「歳徳神(としとくじん)」がいる方角を指します。
また、歳徳神は古代中国の陰陽五行説などの理論に基づく「陰陽道」の神様で、年神様(としがみさま)、正月様(しょうがつさま)とも呼ばれています。※2
歳徳神がいる恵方は、「東北東」「西南西」「南南東」「北北西」の4方向のいずれかと決まっており、5年周期で同じ方角が恵方になります。※3
2026年の恵方は南南東なので、南を向いて左(東側)に15度前後、時計の短針では北を12時としたときの5時半ぐらいの方角にあたります。※4
・2030年までの「恵方」
| 恵方 | |
|---|---|
| 2026年 | 南南東 |
| 2027年 | 北北西 |
| 2028年 | 南南東 |
| 2029年 | 東北東 |
| 2030年 | 西南西 |
恵方を向いて行うことは「万事に吉」で、何をするにもよい方角とされているので、恵方を向いて太巻きを食べ、商売繁盛や無病息災を願うようになりました。「万事に吉」なので、恵方巻きを食べるだけでなく、お正月や節分に恵方にあるお寺や神社に参拝する「恵方参り」などの伝統行事もあります。※2※5※6※7
2026年は神社仏閣へのお参りはもちろん、引っ越しや旅行を計画する際も、南南東を意識するという方が多いかもしれません。
恵方巻だけじゃない!節分の縁起物「柊いわし」ってなに?

節分における厄払いの風習として、豆をまき、年齢と同じ数の豆を食べる「豆まき」は多くの方がご存じでしょう。しかし地域によっては、恵方巻きや豆まき以外の風習があります。※8
例えば西日本では、節分にイワシを食べたり飾ったりする習わしがあります。焼いたイワシの頭をヒイラギの葉に刺して玄関に飾る「柊鰯(ひいらぎいわし)」は、節分にやってくる鬼を追い払うために行われます。鬼が柊の葉のトゲやイワシのニオイで逃げ出すというこの風習から「鰯の頭も信心から(つまらないものでも信仰心次第で不思議な力を持つことがある)」という言葉が生まれました。※9※10
動物性の食品を使わずに野菜や豆腐を煮込んで作る精進料理のけんちん汁を邪気払いとして食べたり、厄を絶ち新しい年を迎えるために蕎麦を食べたりする地域もあります。さらに、食物繊維が多く含まれるこんにゃくを「1年の砂おろし」(体の不要なものを取り除くこと)として食べ、無病息災を願う地域や、「大きなものを食べて邪気を払う」という風習から鯨を使った料理を食べる地域もあります。※11※12※13
そもそも節分とは季節の分かれ目のことで本来は立春・立夏・立秋・立冬の前日と、1年に4回あります。その中で、冬から春への節分は1年の最初の節分であり、災厄を払って福を呼び込みたいという願いから重要視され、特別な日となりました。心身ともによい状態で1年を過ごせるよう、さまざまな節分イベントや料理に願いが込められているのでしょう。
☆節分のもうひとつの代名詞「豆まき」についてさらに詳しくはこちらをご覧ください
・節分はなぜ「煎り大豆」を豆まきする?大豆の栄養と健康効果を知ろう
☆節分で豆を食べるなら、風味豊かな黒大豆がたっぷり入った丸大豆せんべいもおすすめです。

節分の食文化を知ると、季節の行事がもっと楽しくなる
節分に食べられる縁起物には、季節の節目を大切にし、1年をよい状態で始めたいという思いが込められています。恵方巻きの由来や方角の意味などの背景を知ることで、節分がさらに味わい深いものになるかもしれません。恵方巻きを家族や仲間と楽しみながら、季節の移り変わりを感じてみてはいかがでしょうか。
☆季節ごとの思いが込められた日本の美しい和菓子についてさらに詳しくはこちら
・四季折々の和菓子の種類!世界に知ってもらいたい日本伝統の食文化
【参考文献】
※1 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2301/spe13_04.html
※2 国立国会図書館
https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s2.html
※3 朝日新聞社
http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/danwa/2011012500008.html
※4 鹿児島大学
https://www.eee.kagoshima-u.ac.jp/~watanabe-lab/misc/%E6%81%B5%E6%96%B9.pdf
※5 宗教法人 東京都神社庁
http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/sanpai/
※6 浄土真宗本願寺派 築地本願寺
https://tsukijihongwanji.jp/service/megumi/
※7 村松虚空蔵尊
https://www.taraku.or.jp/blog/setsubun/what-eho-mairi-effects/
※8 東京ガス
https://uchi.tokyo-gas.co.jp/topics/7010
※9 株式会社トラストリッジ macaroni
https://macaro-ni.jp/119576
※10 小学館 Domani
https://domani.shogakukan.co.jp/708234
※11 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/35_1_kanagawa.html
※12 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/konnyaku_no_shiraae_kagawa.html
※13 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_27_yamaguchi.html
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ライタープロフィール
澤 晶子(サワ アキコ)
WEB編集者・ライター
長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。


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