2025.06.02

駄菓子の定義って?黒砂糖やザラメを使った江戸時代の庶民のお菓子が話題に

駄菓子は子どもには新鮮なわくわく感を、おとなにはノスタルジックな感覚を抱かせ、見かけるとつい足を止めて手に取りたくなる不思議な魅力があります。手頃な価格で美味しく多彩な駄菓子はいつごろ登場したのでしょうか。今回は、駄菓子のルーツや歴史をひもとき、今も昔も私たちをひきつける駄菓子の魅力をご紹介します。

駄菓子の定義とは?
砂糖が高価な時代に芽生えた安くておいしい駄菓子のルーツ

駄菓子とは、主に子どもを対象とした安価なお菓子のことです。ある人気駄菓子が「3円値上がりして15円になった」と話題になったことを覚えている方も多いと思いますが、一般的な駄菓子には1個10円〜数十円程度で購入できるものも多くあります。

駄菓子のルーツは、放送中のNHK大河ドラマでも描かれている江戸時代にまでさかのぼります。当時は米を使ったお菓子は高級品とされており、庶民が口にできるのは麦やひえ、あわ、屑米などの安い材料で作られたお菓子だったと考えられています。白砂糖が貴重な時代でもあり、多くの一般人にとって甘みといえば黒砂糖や水あめだったようです。※1

こうして作られたお菓子は1文(もん)程度で売られていたことから「一文菓子」あるいは「雑菓子」と呼ばれるようになります。当時の1文は今の数十円程度とされ、私たちが駄菓子屋で目にする駄菓子と同じぐらいです。その後の貨幣価値の変化に伴い、一文菓子は一厘菓子、一銭菓子とも呼ばれましたが、いずれにしても非常に低価格で販売されてきました。※2

なお、「駄菓子」という言葉が使われるようになったのは、明治時代と考えられています。白砂糖など高価な材料を使用した「上菓子」と区別するため、比較的安価な材料で作ったお菓子に「上」の対比となる「駄」の文字を使い「駄菓子」という呼び名がついたようです。

☆お菓子の歴史、お菓子に甘みを加える砂糖についてはこちらの記事をご覧ください。
浮世絵と和菓子の以外な歴史!葛飾北斎の風景画があるものに使われていた?
黒糖と白砂糖の違いとは?ミネラル豊富な黒糖と血糖値の関係

チョコやグミも参入!
代表的な駄菓子は?地域の銘菓や高級菓子に昇格した駄菓子も

駄菓子

一口に「駄菓子」と言ってもその種類は多岐にわたります。もともとの駄菓子は、豆や麦などの雑穀を材料として黒糖や水あめを混ぜ、固めたり焼いたりしたお菓子で、きな粉餅やおこし、あんこ玉、かるめ焼き、かりんとうなどが挙げられます。

江戸時代にチョコレートが伝わり、明治時代の文明開化で西洋文化が入ってくると生活様式が大きく変わりました。ガム、グミなどが駄菓子の仲間入りをし、さらに機械化が進むと駄菓子はさらにバラエティ豊かになり、おまけのおもちゃも駄菓子に欠かせないアイテムとなってきます。
なかでもキャラメルは昭和初期におまけ付きの商品が登場し、第二次世界大戦後には100社以上のメーカーがキャラメルを製造し、おまけにも工夫が凝らされたといいます。その後現在に至るまで、キャラメルは代表的な駄菓子のひとつとして存在感を放っています。※3

また、駄菓子の中には作り方や材料を工夫することで、高級菓子や郷土の銘菓に昇格したものもあります。たとえば埼玉県の「五家宝(ごかぼう)」は、地元でとれる大豆を原料とするきな粉を使った駄菓子として古くから知られていたものですが、今はブランド化され、県を代表する銘菓として扱われています。※4

ほかにも仙台駄菓子や飛騨駄菓子のように、昔ながらの製法で作られた「おこし」「ささら飴」「かりんとう」などの駄菓子が、そのまま地域の銘菓、土産品とし重宝されているケースもあります。旅先で、その土地ならではの伝統的な駄菓子を探してみるのも楽しいかもしれません。※1

☆かりんとうの歴史を紹介するこちらの記事もご覧ください。
かりんとうの歴史を深堀り!黒糖かりんとうと白かりんとうの違いとは

買い物にコミュニケーション、
子どもに貴重な体験機会を提供する駄菓子

コミュニケーション

駄菓子は、もともとは庶民の小腹を満たし、エネルギーを補給するための「補食」の役割を果たしていました。しかしその後、子どもたちの間に広まると、駄菓子は捕食や間食以上の存在に変化していきます。

学校帰りに近所の駄菓子屋に立ち寄り、友人とわいわい言いながらお菓子を選んだことを懐かしく思い出す人も少なくないでしょう。購入した駄菓子をシェアしたり、おまけのおもちゃを交換したりするのは楽しいひとときだったに違いありません。

お小遣いで買える駄菓子は子ども同士のコミュニケーションのきっかけになり、そのときにしか体験できない楽しい時間を提供してきました。握りしめた小銭でどの駄菓子をいくつ買えるかと頭を悩ませているうちに、お金の使い方を学んだという人も多いかもしれません。

また日本各地に伝わる駄菓子は、その多くが地元の特産品を原料としてつくられ、地域経済の発展にも貢献してきました。さらに駄菓子は、今も昔も各地のお祭りなどのイベントで子どもたちの人気を集めています。駄菓子のつかみ取り、くじ引きや射的の景品でもらえる駄菓子、ザラメの香ばしさがたまらない綿あめやカルメ焼きの食べ歩きなど、縁日には欠かせない存在です。
このように、駄菓子は地域の文化や伝統を守り、盛り上げる役割も果たしてきたといえるでしょう。

駄菓子はスーパーやショッピングセンターで買うもの!?
近年の駄菓子事情

駄菓子

世界中のさまざまなお菓子が簡単に手に入るようになった現代でも、駄菓子の人気は衰えていません。昔ながらの町の駄菓子屋は減ってしまいましたが、身近なスーパーに駄菓子コーナーが設けられていたり、ショッピングセンターなどにチェーン展開する駄菓子屋もいくつかあり、駄菓子は変わらず私たちに身近な存在です。実際に、ある調査で20〜80代の男女に駄菓子をどこで購入するか聞いたところ、約半数の人が「スーパーで買う」と回答しています

販売形態が変化しても、売られている駄菓子のラインナップが大きく変わらないのは、企業努力の賜物なのでしょう。今でもスーパーの駄菓子コーナーやショッピングセンター内の駄菓子屋へ行けば、麩菓子、チョコ、グミ、きなこ菓子などの駄菓子が数十円で手に入ります。

近年、駄菓子屋を舞台とした人気児童小説がテレビアニメ化や映画化されて話題を集めました。駄菓子には、子どももおとなも目にするとつい足を止めてしまう、時代を超えた魅力があるようです。今度どこかで駄菓子屋を見つけたら、懐かしいお菓子の数々を手に取ってみませんか。

【参考文献】
※1 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/sendai-dagasi.html
※2 伊勢内宮前 おかげ横丁
https://okageyokocho.com/main/tenpo/zeniya/
※3 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASSCW2RZBSCWUPQJ003M.html
※4 熊谷市
https://www.city.kumagaya.lg.jp/kanko/meibutsu/gokabo.html

  • 澤 晶子

  • ライタープロフィール
    澤 晶子(サワ アキコ)
    WEB編集者・ライター
    長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。