2025.06.02

水分補給におすすめの飲み物とは?熱中症対策に有効な成分を取り入れよう

近年、夏の暑さがますます厳しくなってきています。2025年も猛暑が予想されており、暑さへの適切な備えが求められます。特に、梅雨どきから真夏にかけて気になる熱中症対策には水分補給が欠かせません。水分補給の基本は飲料水ですが、汗をたくさんかく場面などでは状況に合わせて飲み物を選ぶことが大切です。今回は、暑い季節を乗り切るために知っておきたい、水分補給におすすめの飲み物について解説します。

熱中症は身近な問題!夏こそ日常で適切な水分補給を習慣化

暑い季節が近づいてくると気になるのが熱中症です。しかし、テレビのニュースなどで注意を呼びかけられても「自分には関係ない」と感じる方もいるのではないでしょうか?

2024年5月〜9月に熱中症によって緊急搬送された人は9万7000人を超え、2023年から約6000人増加しています。また、熱中症が発生した場所として最も多かったのは「住居」で、全体の約4割を占めています。※1こうしたデータから、熱中症は日常生活の中でも十分に起こり得る「身近な危険」であることがわかります。

2024年の夏は暑さが特に厳しく、1日の最高気温が35℃以上になる「猛暑日」の連続日数が過去最多を記録した地点が数多くありました。なかでも、福岡県太宰府市では猛暑日が40日も続き、国内の歴代最長記録を更新しています。※2

今年の夏も非常に暑いと予想されており、熱中症に一層注意を払う必要があります。熱中症対策には水分補給が不可欠ですが、暑さによる体調への影響を和らげるには、状況に応じて飲み物を適切に選ぶ習慣をつけることが大切です。

汗をかく夏に補いたい!
飲み物選びのポイントはミネラルと糖分

ミネラル

日常生活における水分補給は、基本的に水道水やミネラルウォーターで十分です。※3しかし、夏場にスポーツや仕事で体を動かし、大量に汗をかく場面では飲み物の種類も配慮する必要があります。ここで意識したいのは、体にとって大切な成分を補えるかどうかです。

汗には水分だけでなく、ナトリウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルも含まれています。※4ミネラルは体のさまざまな機能を調整するうえで欠かせない成分で、汗によって体外に流れ出てしまうと体内のバランスをコントロールしにくくなります。その結果、体温が通常よりも上昇し、臓器が高温にさらされて熱中症が起こってしまうのです。※5

そのため、熱中症対策においては、大量に汗をかいたら水分とともにミネラルを意識的に補うことが何より重要だといえます。

また、ミネラルは適度な糖分と一緒に摂ると体に速やかに吸収され、それに伴って水分も取り込まれやすくなることがわかっています。※6汗をたくさんかいて少しでも早く水分を補給したいときは、ミネラルに加えて糖分も含まれている飲み物を選ぶとよいでしょう。

☆熱中症対策に重要なミネラルについてはこちらの記事もご覧ください。
秋バテや残暑の熱中症対策にも必要!ミネラルの一種「カルシウム」の補給におすすめの食べ物は?

毎日飲んでも大丈夫?スポーツドリンクの賢い使い方

スポーツドリンク

次に気をつけたいポイントは、飲み物に含まれる塩分や糖分の量です。
日本スポーツ協会では、運動時の水分補給として0.1〜0.2%の食塩と適度な糖質を含む飲み物を推奨しており、市販のスポーツドリンクがこれに当てはまります。

糖質は体を動かすエネルギー源となる栄養素でもあり、糖質を含む飲み物は水分補給だけでなく、運動によって消費されたエネルギーを補う役割も果たします。※7ただし注意したいのは、糖質の濃度が高すぎると飲み物が胃にとどまりやすくなり、結果として水分の吸収が遅れる可能性がある点です。そこで日本スポーツ協会では、4〜8%程度の糖質濃度を推奨しています。

一方で、普段あまり体を動かさない人は、スポーツドリンクを習慣的に飲むことを控えたほうがよいでしょう。スポーツドリンクに含まれる塩分や糖分は、日常生活の中で摂りすぎると高血圧や肥満につながるおそれがあるためです。食事をしっかり摂れていれば、体に必要な塩分や糖分は充足できていると考えられます。※3
スポーツドリンクを飲むのは大量に汗をかいたときにとどめましょう。
なお、経口補水液はスポーツドリンクより塩分などの電解質が多く含まれるため、日常的に摂取しないよう消費者庁が注意喚起をしています。※8

☆夏の水分補給・塩分補給の重要性についてはこちらもご覧ください。
熱中症や夏バテ予防のための水分補給 ポイントは水分と塩分の摂取!

カフェインを含まない麦茶がいい?
日常の水分補給におすすめの飲み物とは

麦茶

毎日の水分補給には、水やミネラルウォーターだけでなく、麦茶やルイボスティーなど「カフェインを含まない」飲み物もおすすめです。

カフェインはコーヒーや紅茶、煎茶、ほうじ茶などに含まれる成分で、体内の水分を排出する利尿作用があるとされています。そのため、カフェインを含む飲み物は水分補給ではなく、リラックスしたいときや気分転換に飲む程度にしておくとよいでしょう。

お酒も水分補給には適していません。酒類に含まれるアルコールにも利尿作用があり、またアルコールの分解には体内の水分が使われるため、飲酒はかえって水分を失うことにもつながります。※3お酒を飲むときは水も十分に摂取し、水分不足に陥らないように気をつけてください。

熱中症のリスクが高まる夏の水分補給で大切なのは、場面に合わせて適切な飲み物を選ぶことが大切です。汗のかき方など状況に応じて工夫し、暑い夏を乗り切りましょう。

☆日常生活へのお茶の取り入れ方についてはこちらもご覧ください。
カテキンと緑茶の最新事情。30代からの健康を考えた緑茶習慣
朝活は「朝茶」でリラックス 副交感神経がもたらす健康生活

【参考文献】
※1 総務省
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r6/heatstroke_nenpou_r6.pdf
※2 日本気象協会
https://www.jwa.or.jp/news/2024/11/24355/
※3 谷口英喜(2023年)「いのちを守る水分補給」評言社
※4 花王株式会社
https://www.kao.com/jp/binkanhada/fourseasons_02_03
※5 環境省
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
※6 独立行政法人 農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000179.html
※7 公益財団法人 日本スポーツ協会
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke/heatstroke_0531.pdf
※8 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution

  • いしもとめぐみ

  • ライタープロフィール
    いしもとめぐみ
    管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。